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●聞き手
……大野教代 ……謎のねこ
今日は、関西訓練士界のアイドルと評判の吉村先生をお迎えしました。
アイドル〜? それだけ?
美しいと評判の……(上のお写真ではお顔がわかりませんよー)。
どーも、吉村です。(笑)
……(笑)。
おっきーですねー(吉村さんの愛犬・アミーちゃん<シェパード>がうろうろしている)おいくつですか?
もう7歳ぐらいかなぁ。
まず、吉村さんが訓練士を目指されたきっかけというあたりからお話をうかがいたいのですが。
こどものときからずっとなにか動物関係の仕事をしたいと思ってましたから、いつごろかなあ。犬の訓練をやりたいと思ったのは、そうですね、中学三年くらいのときかなぁ。

吉村さんの訓練のスタイルを見ていると、犬と接するときにその飼い主さんの家族関係、人間関係をすごく重視しておられるように感じるんですけど、そのスタイルの根っこにあるものってなんなんでしょう?
愛です(笑)。テーマは愛。でも感じることが大事なので、本当は言葉にしにくいですね。どういえばいいんでしょう。結局、人と人とか犬と犬、人と犬との間をつなげている絆を大切にしたい。根本的には、人も犬も同じ心を共有できる、その、共有できる部分を見逃さないようにとしているので、周りから見るとそう感じられるのかもしれませんね。

たとえば、どんなときに「心の共有」を実感できるんでしょう?
訓練をやりはじめた最初の頃は、犬ががんばってくれたり、心を開いてくれたときにはじめてその犬を好きになってたんです。だけど、それってちょっと違うことに気づいた。本当は自分ががんばって、自分が心を開いて、それを一生懸命伝えるのが大事なんだと。そうすれば、相手はわかってくれるんですね。犬と私の愛情の方向というか、順序のあり方みたいなのに気づいて、それで、私の方からもっと素直に、「好きだああ!」って犬にぶつかっていこうと思った。人間同士と同じで、これって簡単そうで実は結構勇気がいるんですねー。

吉村さんとの普段のお話しの中で、飼い主さんの誤解や愛情の裏返しがその飼い主さんと犬の間を遠ざけるということが出てきますよね。
飼い主さんはみんな、根本的には犬を好きなんですよ。けれども、犬のことを知らないんです。犬をわかった上で、飼っている人というのは、ほとんどいない。犬に勘違いのしつけをしている人がすごく多い。聞かなくてもいいことを「聞け、聞け」って一生懸命やってたり、犬もそれを学習していたり。もちろん、飼い主さんは「愛情」をもってやってるんですけどね。
悲しいかな、犬と人間は成長のスピードが違うから。たとえば、犬の親離れの時期は人間とはちがうんですね。人間の情緒でいえば、犬種によってもちがうけどだいたい一年で二十歳前後ぐらいに成長するし。だけど人間から見たら、半年は生後六カ月の赤ちゃんですから、その感覚で接してしまう。中学高校生に赤ちゃんのように接しても、うまくいくわけありませんよね。
問題がある犬の相談を聞くと、ほめるべき時期にほめていなかったというケースがすごく多いです。犬は、生後4カ月ぐらいまでにほめて、ほめられることを覚えさせないといけないと思うんだけど、普通は逆になっちゃってる。ほめるどころか、たとえば生まれたばかりのかけ算をしらない子供に「2×3は? じゃ、6×7は?」としつこく問いつめて怒るという様なことを平気でやってしまってる。かけ算やるためには最初九九を覚えたり、数をかける仕組みを覚えたりしないといけないのに。理不尽なことで怒られて、ほめられたいところをほめてもらえない。その犬には、ほめられて反応する感受性があるのに、飼い主さんがほめていないんです。「訓練士さんのいうことは聞くけど、私のいうことは聞いてくれない」というトラブルは結構ありますけど、これが原因になってることが多いですね。

確かに、がんばってるときにはほめてあげたい。だけど、飼い主さんにとっては、犬がどうがんばってるかわからないときがあると思うんだけど……。
それに、しつけの本などでは「まずこうする」というところから入っていきますけど、それがどうしても犬のしつけのイロハのように思ってしまいがちですよね。四角張った方法を押しつけようとする飼い主さんが多いと思うんですけど。
そう難しく考えるよりも、いかに人間の声や態度に対して反応するか注意してあげるのがいいと思う。犬が反応したら、人間は嬉しいという態度を示す。喜びを表現してあげる。犬がたくさん努力してるのに、「犬は賢いもの」というイメージで「これぐらいできてあたりまえだから」と決めたらダメ。ちっちゃくても一生懸命の無数の努力を見逃してしまってるんですね。
努力したことにきちんと反応してあげる。「こうしてほしいな〜」というときにこちらの要求に反応できたらきちんとほめてあげること。座れ・伏せといった初歩から、警察犬を育成するような高等訓練まで、この基本は変わらないです。

ほめるということの大切さは、人間も犬も同じなんですね。
そう。人間同士でも、人のことを「頑張ってる」と見てあげられる人がいますね。他の人に対して「この人頑張ってるな」「あなた頑張ったね」と見てあげられる人は、専門知識がなくても犬に対して上手に接するんです。また、そういう人の家庭は、家族間の雰囲気がちがいます。犬の様子がちがうし、お子さんがいるとすればそのお子さんの雰囲気もちがう。きちんとほめて、怒るときはきちんと理解させて怒り、怒ったあとはきちっとフォローする。これ、すごく大切です。
たとえば「さあ、いまから散歩にいくよ」っていうとき、犬が興奮したら怒る人がいますね。でも、そんな時に犬が興奮するのはあたりまえ。犬は、飼い主さんと一緒にでかけるのが、もしかしたらご飯より楽しみなのかもしれない。それほど楽しい時に怒るっていうのは、「遊園地に連れていってあげよう」といって喜ぶ子供を「騒ぐな! バシバシバシ!」って殴るのとおなじじゃないですか。人間ならそんなことしないでしょう(笑)。子供が喜んだら、親も嬉しいじゃないですか。だとすれば「家族として暮らしている」とかいいながら、人間は犬に対してずいぶん無茶なことしてるんですね。

うん、うん、わかる。それで、犬と心が通じあえる瞬間っていうのは、吉村さんの場合具体的にどんな場面だったんでしょう。
積み重ねて、積み重ねて、あるときに「あ」って感じたんです。ある犬を訓練していて、ふと「この子は、私のことをわかってくれた上でやってくれてるんだ」って。教えたからやったという感じじゃなくて、私を理解してやってくれたんだなって感じた。
その時の子は、基本的にあまり運動の好きな子じゃなかったです。でも、競技会に出したいというのがお客さんの依頼だった。その訓練の途中で、私もイライラしたことがありましたけど、逆にここで怒らないほうがいいな、ここで無理は禁物かな、とか考えながら進めているうちに、さっと気持ちの通じた一瞬があって、その時からでしたね。それから少し訓練のスタイルが変わって、私は頭のなかで「いかに楽しくできるかな」ということばかり考える様になりました。この子の「いいところ」は絶対つぶさない様に、引きだそう引きだそうとして。だから、最終的には、競技会という具体的な目標もあったけど、いかにこの子が楽しく振る舞える様にするかというのが目標になりましたね。
なぜそこまで意識して接することができたかというと、ひとつには依頼してくれた飼い主さんが私をよく理解してくれて、飼い主さん、犬、私という三角のバランスがすごく奇麗に密接に保てたんですね。飼い主さんの理解は大きかった。競技会に出すという前提で、高い点数を望んで、それに応じた訓練を飼い主さんは期待していたんですけど、すごく私のわがままにやらせてくれた。普通は、そういう訓練は滅多にできないんですけどね。

その「わかってくれた」っていうのは、どんな感じなんでしょう。
本当に言葉にできない領域で、不思議ですね。思った以上にお互いがお互いのことを理解しあえる、そんな瞬間があるんですね。

いつもなら遊んで注意散漫になる子が真剣になるってこと?
一匹でいる時はぼーっとしている子だったから、あまり反応がわからなかったんですけど、訓練に入ると真剣に、私の態度に律儀に応じてくれました。私の訓練がうまかったわけじゃなく、なにかが伝わった。その犬が飼い主さんと遊んでいるときに、すごく幸せそうな表情をして「私はいま、このときがいちばん幸せなんだああ!」という顔をしながら、全身がもう、キラキラしてるんですよ。もう、ハンパじゃなくキラキラしてて、「これだ、訓練は!」と思いました。
結局その犬は競技会でよい成績をとれたんですけど、成績もそうだし、その競技に入るときに「さあ、私やりまっせえ!」という態度で、見ている私がドキドキしてるのに、その子はすごく嬉しそうに競技に臨んだんですね。あれはホントに楽しかったなあ。

うーん、いいなあ。そのキラキラしたつながりが大切という話に平行するんですけど、あるお医者さんが、同じぐらいの重さの同じ病気の患者さんでも、なぜか元気になる人と亡くなる人がいて、それが最初の印象でわかるという意味のことをいってたんですよ。それとおなじことで、犬に関しても同じ病気が直ったり、ぶり返したりすることがありますよね。で、そうした場合、そのキラキラ関係があるかないかっていうのは大きな力があるんじゃないかと感じます。それがなかったら、いくら犬という生き物を知っていてテクニックで教えられても、うまくいかない、つながりができにくいということじゃないかしら。
そうそう。だからさっきの話で、「さあ、いまから散歩に行くよ」といって、犬が興奮したらバシバシ怒るというのは、ちょっとちがいますよね。まちがってる。犬の気持ちをわかっていない人が多いっていうのは、そういう意味なんです。家に来たばかりの犬に対して「犬は賢いもの」として接してしまう。幼稚園児に大学生の勉強をさせようとする。「いうこと聞かない」「覚えてくれない」って悩む。まだ子供なんだから、すぐ覚えられませんよ。それと成長のスピードや愛情のバランスは重要ですね。
それと、環境に応じた飼い方や教え方とかありますね。マンションで住んでるとか、家族構成とか、おかれてる場所とかによって、起こりうる問題行動や解決方法、教え方も全然違ってきます。

赤ちゃんがいるお家といないお家とか?
もちろん関係します。そういえば、最近は家の中で飼っている人がすごく多いなあ。だから、犬も人間の家族関係にはすごく影響されてますね。
犬が同じ行動をしていても、動物行動学だけにとらわれたら、人間の中で暮らす個別の犬のケースには対応しきれなくなるし…たとえば、よくほら、犬がおなかをみせるのは「服従のポーズ」っていうでしょう。だけど、人間の中で暮らす犬は必ずしもそうじゃない。犬が本当に服従しておなかを見せるときっていうのは、すごく全身を緊張させますから。お家の中で犬が人間におなか見せるっていうのは、ほとんどの場合「こうすればなでてくれるー」「かわいがってくれるー」というポーズなんですね。服従じゃなく「さわって」のお願い。だから、室内で飼っている犬は、外で飼っている犬や野生の犬より複雑ですよ。
でもね、結局、飼い主さんや周囲の環境にとって犬の行動が苦じゃなければ、問題と捉えなくてもいいと思いますよ。むりやり直す必要はないと思う。直したいと思ったら、まず扱い方や接し方から考え直さないといけなくなるでしょう。問題は、その飼い主さん・人間が犬になにを求めているか。家族構成とかその環境において守らないといけないことはなにか、ぐらいですね。
あとはもうぜんぶOK! なにをしてもOK! ですよ(笑)。散歩の時には飼い主の左につかないといけないというけど、別にふらふらしてもいいと思います。無理にだあっと引っ張らないかぎり。ただ、犬が嫌いな人とかがいたら、飼い主さんの横にしっかりとつけれたらいい。あんまり細かくこだわらないでいいと思うな。うん。

その家庭や環境によってなにを「問題」とするか、そしてその対処の仕方も変わっていくということですね。専門書を読んで「オオカミの習性は」みたいな所から勉強するのではなく、家々によって違うことをまず認識する。でも、一般の飼い主さんは、どういうときに怒ったらいいか。怒らないでいいかというのがわかりにくいですね。ペットを飼ってる普通の家庭に、訓練師さんの広告とかチラシがまわってくるってことはまずないし(笑)。おまけに訓練士さんって気軽に頼める雰囲気じゃないし(笑)。
そうですね。訓練士というと「警察犬訓練所」という雰囲気で、ちょっと近寄りがたい雰囲気がありますけど、でも最近は「ドッグ・スクール」とか「しつけ教室」っていうのを前面に出して、柔らかくしている所が多いですよ。

そうですね。家庭犬の場合、求められているのは「訓練!」っていう堅いイメージじゃなく「パピー教室(お母さん教室的なもの)」「しつけ教室」の様な、訓練士さんとの接点ですね。ところで、吉村さんは大阪での出張訓練がメインで、しつけ教室も活発にやっていますよね。パピー教室はいま和歌山だけでしたっけ。
ええ。今のところは。

このホームページをごらんになる方のために、吉村さんの得意の訓練分野を教えて下さい。飼い主さんによっては、しつけだけでなくアジリティとか競技会に出したいという希望もあると思うんですけど。
「競技会」だけになってしまうんじゃなく、私はその子になにがいちばん向いているかということをよく考えて、見抜いてあげられる訓練士でありたいと思います。やっぱり、犬にも性格とか適性がありますから。
それから、一般の飼い主さんにお願いしたいのは、せっかく犬を飼うんだから、そこからなにか生きるための素敵なヒントをいっぱい得てほしい。やっぱり、犬を飼っていない人に比べたらお金も手間も時間もかかりますから。犬が家族の一員となることで、家族のためにもプラスになる、素敵な時間をもってほしいです。
私のお客さんで、子供の教育のために飼ったという人がいますけど、そこの家族はみんながいたわりあっていて、素敵でした。犬が人間を負担に感じたり、人間が犬を負担に感じたり、せっかく一緒に暮らすのに、そんなのダメですよね。なにか素敵な「よかったねえ」という思いをお互い感じられるように。それが私の最低限のお願い、かな。

「飼い主さんにも犬にもキラキラを」ですね。
はい。その理想的なつながりを、私は犬から教わったし、人間の友達からも教わりました。きっかけは、やっぱり犬だったかな。だから、訓練士になって私自身人間的にずいぶん変わったんですよ。まず第一に、素敵な友達がいっぱい増えました。きっと、いまの私には、人に誇れる素敵な友達がいっぱいいると思う。
素敵なキラキラ。うーん、最近のねこには足りないなにかのような…今日は長時間ありがとうございました。最後に、吉村先生の「夢」を教えてください。
いつも「キラキラ」して、みちよさんや謎のねこさんとも、もっともっと「キラキラ」して、世界中に「キラキラの絆」を広げたい!…です!
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